おススメ本紹介に、ヤマトのムック本をセレクトする……。
なんちゅー反則技かと我ながら思うわけですが(笑)、あえてご紹介させていただきましょう。
真っ向勝負の77maru77、みなさまにぜひお勧めしたいのは、「宇宙戦艦ヤマトモデリングガイド 完全版」であります。
ではなぜこの時期、4年の時を経て完全版が出たのか。
それには2010年12月、実写版ヤマト公開に世の中が揺れていたころ起きた、ヤマト模型界における大事件が関係しています。
長い間、沈黙を続けていた、“スタンダードなヤマトの新作プラモ”=「1/500スケールヤマト」が、満を持して堂々発売となったのです。
►「1/500スケールヤマト」
バンダイ 1.1Kg YAMATO 2010/12/5 ASIN:B0045T1JDY
……ここで私はつい熱くなり、いかにこれが大事件だったかを書き綴ってみたのですが、読み返してみたらあまりにもウザいので、すっぱり削除することにしました。
とにかく1983年の完結編以降、単発企画モノでしか出てこなかったヤマトのプラモが、「普通に子ども達がお店に行ったら置いてある」、そういう扱いで、完全新作として発売されたのです。
「SPACEBATTLESHIPヤマト」の公開とあいまって、2010年12月の模型各誌は、ヤマトが席巻しました。
表紙にヤマト。見返しにヤマト。特集にヤマト。
くぅっ、泣ける……。
2007年版の「モデリングガイド」は、当時企画モノとして大きな話題となった、ギミック満載の豪華モデル・1/350ヤマトをメインに据えた構成でしたが、今回の「完全版」では、この1/500モデルを巻頭に据えています。
言い換えれば、お値段据え置き大増強158%の完全版を出さずにはいられないほど、この1/500ヤマトの登場は大きな意味を持っていた、ということなのです。
2011年5月の「ヤマトファンのつどい」(「ヤマトパーティ2012お知らせblog」)に参加された方は、会場入り口横に、無防備な姿で展示されていた模型をご覧になったかもしれません。
あそこにポンとさりげなく置かれていた「実写版CG風塗装のヤマト」は、この1/500ヤマトであり、「電ホ」の特集として掲載された作例でもあり、「モデリングガイド完全版」の表紙を燦然と飾っているものです。
また、青山にオープンした「CAFE CRWE」にいらっしゃればいつでも、このヤマトをはじめ、どうやったらここまで作り込めるのだろうと凝視せざるを得ない数々の掲載作品を、実際にご覧になることができます(感涙)。
――はっ。(と我にかえる……)
プラモの話ではなく、本の紹介をしなくては。
模型の本のどこが面白いかといえば、そのマニアックさ、に尽きるのかもしれません。
私はこのように知った風に語ってはいますが、実はメカのことはサッパリわかりません。
模型制作も、素人以下のレベルです。
どうやって作ったか、どこにどうこだわったのか、解説文を読んでも、わからないことだらけです。
でも、模型が好き、ヤマトが大好きな人たちが作った、こだわりの作品を見るのはとても楽しい。
例えば市販のキットを改造して、自分が思い描くフォルムに近づける作業は、2次創作でヤマトの物語を書く(描く)ことに似ています。
設定や画像を徹底して研究し、さらに専門的知識と技術と想像力を動員して「俺ヤマト」を形作っていく、その想いには大いに共感するのです。
ヤマトだけではありません。
人気のガミラス艦はもちろん、敵・味方、戦艦から艦載機、波動砲のトリガーに至るまで、劇中に登場するモノへ惜しみなく注がれた深い愛情の数々。
ひとつひとつのパーツのディティールアップをはかり、ときにリアリティを追及し、ときに雰囲気重視を選択し(これ重要)、創意工夫をこらした作品は、見ていてニヤニヤせざるを得ないパワーを放っています。
添えられた解説や制作過程を紹介した記事もしかり。ヤマト世界を知り尽くし、洒落とツッコミで彩ったこだわりの文章には、思わずニヤリとしてしまいます。
そこに見えるのは、ヤマトへの否定ではなく、しょーがないよなぁと笑いつつあきれつつ、好きで好きでたまらない、その気持ち。
ヤマトは物語やキャラクターなどの矛盾やホコロビを指摘されがちですが、メカニックに関していえば、もう、フォローしようのない設定上の「変」が、至るところにあるわけです。
立体物の制作は、最低限の整合性がないとできない作業。途方もない苦労が生じます。
そこを、むしろ楽しみながら埋めていく。こんちくしょーと思いながらも、ヤマトが好きだから、です。
さらに私がイイなぁと思うのは、そんなモデラー各氏が書く文章が常に、「俺たちちょっとヘンだよね」っていう空気を醸し出していること(笑)。
やっていることは非常にテクニカルなのです。知識も深い。出来あがったものは、市販のキットと元は同じだとは思えないほど。
それなのに、ちょっと引いているというか(笑)。
「ま、こんな感じですかね」と最後にスカしてみせる、どこかで「こんなことに一生懸命になっちゃって」と自分を客観視し「大したことないっすよ」と笑ってみせる、そんな雰囲気。
心の底では燃えているんだけれども、そこに溺れないでいようという意識がやけにみえる。そしてきっと、読者も同じ気持ちでいる。
なんとも不思議で心地いい連帯感、なのです。
工作班って、きっとみんなこうなんだろうなぁ、と思ったりします。
情熱と柔軟性と冷静さが同居している人たち。
ぜひ「モデリングガイド」を手に取り、その素敵な世界を感じていただきたい! と思います。
惜しむらくは、このムック本の帯に「【ファースト】から復活篇までのすべてを徹底して網羅した……」とあること(笑)。
ガンダムとは違うのだよ、ガンダムとは! と一応ツッコミを入れておきましょう。
なお、ライバル誌である「ホビージャパン」からも、2011年3月にヤマトの模型作品集「宇宙戦艦ヤマト模型作品集」が発売されています。お値段同じく2,500円(税別)。
►「宇宙戦艦ヤマト模型作品集」(ホビージャパンMOOK 385)
ホビージャパン 2011/3/10 153p ISBN-13:ISBN-13: 978-4798602004
ホビージャパン誌上で不定期連載されていた特集の再掲ですが、こちらはマニアックさでいえば、さらに上を行く面白さ。
ヤマト模型の網羅、初心者向けの指南という点では「モデリングガイド」に一歩譲りますが、超絶テクニックを駆使した作例、劇中には登場しない妄想ガルマンガミラス艦創作など、突き抜けちゃった感たっぷりの力作が見られます。
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