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宇宙図書館 秋の夜長に

宇宙図書館 7thBOOKFAIR 秋の夜長に のコンテンツの1つ、「オススメ本」のコーナーです。

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ようこそお越しくださいました。

宇宙図書館 7thBOOKFAIR 秋の夜長に 2011 をご訪問いただきありがとうございます。

ここは、宇宙図書館 7thBOOKFAIR 秋の夜長に2011 の1コンテンツで、オススメ本を紹介しています。
基本的に、重大なネタバレ無しで紹介記事を、【ネタバレ有りの感想はこちら】にはネタバレ有りの感想を置いています。
コメント欄でのネタバレはOKです。

宇宙図書館ってどういうサイト?

 弊サイトでは、管理人の気の向くまま、
 「宇宙戦艦ヤマト」に関する作品、歴史(主に日本史)に関するコーナーなどを扱っており、
 その中で、BOOKFAIRという企画を不定期に行っています。

 宇宙図書館・扉 は こちら
 宇宙図書館・7thBOOKFAIR会場 は こちら

 宇宙図書館は、管理人ポトスの管理・運営するサイトですが、
 様々な方にご協力いただいております。
 このオススメ本のコンテンツにも、管理人以外のたくさんの方がご参加くださっていますので、 
 紹介者には各記事に署名していただいています。

オススメ本のindex

 カテゴリ別index
 こちら をご利用ください。
 掲載順indexは こちら をご利用ください。 

●最新の記事は、ひとつ手前からお読み下さい。


 弊サイトからいらした方も、偶然辿り着かれた方も、
 どうぞごゆるりとお楽しみいただければ幸いです。

 コメント、拍手(コメント)などお気軽にいただけると、大変喜びます。^^

宇宙図書館 管理人 ポトス

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『いつでも会える』


更新情報21:『いつでも会える』 著:菊田まりこ
【紹介者:吉野御前様】
 
この世に人として生まれれば、貧富や美醜、賢愚に個人差はあっても、「死」だけは平等にふりかかってきます。
生まれたからには死ぬのがさだめ。
しかも「死」とは、命ある者には経験不可能な事態であり、人が「死」を知覚するのは、あくまでも「死者」の遺族、或いは友人知人、つまり第三者としてでしかありません。
 
 「自分でない誰か」の「死」をどう受け止めるか…。
 大好きだった人の死を、いかに受け入れるか。


►『いつでも会える』

 著:菊田まりこ 学習研究社 1998/11 ISBN-13:978-4052010552
 本書は、絵本でありながら、誰もが容易には出せないであろうこの問題に、あくまで前向きな一つの答えを出すものです。「答え」という言い方が適切でなければ、「救いのある受け止め方」とでも申しましょうかね…。
 
主人公は犬のシロ。
ある日突然、シロの大好きだったご主人の「ミキちゃん」が「いなくなって」しまいます。犬の「シロ」には「死」ということが理解できません。ミキちゃんを探して、でも見つからなくて、悲しむのです。

ある夜、シロは夢を見ます。懐かしいミキちゃんの夢。ミキちゃんの声。
そしてシロは気付きます。ミキちゃんは「いる」のだと。
遠くて近いところにいるのだと……。
 
 
ワタクシは初めてこの本を読んだ時、不覚にも本屋で落涙寸前になりました。
 
人によってはこのお話を「欺瞞」と呼ぶかもしれません。
けれどワタクシは思うのですよ。
世の中には「おとぎ話」が必要なのだと。

耐え難いほどに辛い事悲しい事を受け止め、受け入れるために、あえて科学的でも論理的でもないことを信じる方が、前向きな救いを齎してくれる事もあるのだ、と。

もちろん、これが正しい受け止め方だなどと申すつもりはございません。受け止めるのも、はねのけるのも、あくまでもそれは個人の胸の内にあるもの。他人がとやかく言える筋のことではない。
ただ、こういう「救い」を否定する必要もないと思うだけでございます。
 
本来こういったことは「宗教」が担うべき役割ではございますが、日本においては、それがとても難しくて、遠い。
ですから、良くぞこういう絵本を書いてくれた、と思うのでございます。
 
 
 
ここまでは、実は数年前に一度書いたことでした。
その当時は迷いなくそう思っていましたし、今でもそれは変わりません。人の世には「おとぎ話」が大切なのだと、ワタクシは信じている。

ただ、それを人に薦めることには、ためらいを覚えるようになりました。
ワタクシの脳裏に、一人の女性の姿が浮んだからです。

3・11の震災で、息子さんとご主人を一度に亡くされた方。
とても穏やかで、物静かで、周囲に気も使う方でした。ご自分からあれこれ胸の内を語られるような事はなく、彼女の境遇も、同じ避難所で仲良くしていた方から伺った事でした。

何日も何日も二人が見つからなくて、それでもずっと、毎日、彼方此方を探していらっしゃったそうです。
2か月たってやっと「これではないか」と思われる遺体が見つかった時、もう、外見から個人を特定するのは難しい状態になっていた。
その時に、真っ先に下着を見たんだと、その方はおっしゃったそうです。
 
『息子も主人も同じような体格で、洗濯した後いつも、どっちがどっちのだか分からなくなるのよ。だから下着のゴムのところに名前を書いてあったの。それがあったから、すぐにそれが息子と主人だってわかったの。書いておいてよかったわ。』
 
自分の目の前で穏やかに微笑まれている方の後ろには、そんな事実があって。
穏やかだと思い込んでいた笑顔は、虚脱や悲哀、苦悩を孕んでいたのだと気付いて。
ジクジクと、心は血を流し続けているのだと知って。
 
 あの人に、この本を薦められるだろうか。
 あの人の救いに、この本はなれるだろうか……。

 
 
答えが出せませんでした。
だからこの本を紹介するか否か、正直迷いました。
 
迷ったけれど。
でもやっぱり、ワタクシは、必要だと、思う。
無神経かもしれないし、頭でっかちの理想論かもしれないけれど、それでも。
今は無理でも、時が来ればきっと、優しい何かを、傷ついた心に齎(もたら)してくれる気がするのです。
 

文責:吉野御前様「一期の夢



吉野御前の旅の記録はこちらから。

「一期の夢」カテゴリ:月は東に日は西に
 2011/08/01エントリー記事 「さいさき良いスタート」 より

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『銀二貫』『八朔の雪』

更新情報20:『銀二貫』『八朔の雪』 著:高田郁
【紹介者:瑞喜様】

TVの江戸時代劇といえば大江戸捜査網(瑞喜、マニアック!?)。
銭形平次、鬼平犯科帳。そして、水戸黄門!
どれも、お江戸が舞台のお話です。(水戸の元気なご老公の話は全国行脚だけど…)
今回ご紹介するお話は、江戸時代ですが、お江戸常識そのまま、というものではありません。

お江戸と上方(かみがた)の大坂や京都。
距離が遠いと異なることが多いんです。

たとえば、味付け。
 関西は「薄味」。
 関東は… 

前述の時代劇でも、高額貨幣の単位は「両」です。でも、これはお江戸が舞台だから。
実は、通貨って全国一律では、ないンです。
(ちゅーか、気が付かなかったのは瑞喜だけ??)
大坂は『銀貨』。
つまり「一両、二両」という代わりに「銀一貫や一匁(もんめ)」を使う。

お江戸と上方。あの時代ではまーったく別の国。
だったんですよ。

 

さて、前置きが長くなりましたが今回ご紹介する2本。
どちらも上方出身の主人公のお話。
ただ、舞台は大坂とお江戸であり、男性と女性と違います。が、どちらも『出世もの』です。

つまり、主人公は最初、どん底なんですよ。
そこから、いじめられ苦労して、問題を排除しながら這い上がっていく。
手を貸す者もあらわれるけど、基本・主人公が頑張って頑張って問題を解決していくお話。
(1本は完結していないので、(一応)どうなるのかわからないですけど…)

そこに、どんなエッセンスをちりばめるか… が、作者の腕の見せ所、っちゅーもんでしょう!

►『銀二貫』

 著:高田郁 幻冬舎 2009/06 296p ISBN-13:978-4344016835

 文庫はこちら。
 銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)


さて、最初にご紹介するのが『銀二貫』――だいたい、2百万円くらい

『2百万円』っていうショーゲキ的な題名っちゅーことです。

江戸時代・一般庶民であれば、大きなお金を必要としません。
稼いだお金で食べる。毎日が自転車操業。でも、それで立派に生きてけます。
中小商人も同じ。店という資産がある分、お金は出入りする。
それでも、『2百万円』は大金。

大金だけでど、出すときはさらりと出す。
それが、大坂商人の神髄なんですよ!!


この『銀二貫』作中キーワードで何度も出ます。

大阪・天満の寒天問屋、井川屋の主人・和助が主人公を救うところから、話ははじまる。
父親を切られ主人公まで殺されそうになったところを、商人ならではの采配で救うのである。
その値、『銀二貫』。

いや。和助は、『救う』んではない。『仇討を買った』のだ。(ここ、ポイント)
こうして武家であった主人公は名前を松吉と改め、井川屋に奉公することとなる。

大坂商人の神髄・「始末」「才覚」「神信心」。
練羊羹(ねりようかん)誕生秘話、主人公の恋… これがまた、切ない! いや、「はがいい」

そうそう、全編上方言葉です。(慣れないと読みにくい??)
でも、大坂商人のお話で大坂人情ものなので、この微妙な言い回しも楽しんでいただければ。

何度、ほろりときたか。
みな、一生懸命生きてます。
そして、助け合って生きてます!


ちょっと薀蓄(うんちく)系の部分は多いですが、読了後は、さわやか。
ええ、安心してお読みください!

そして、最後の一言に、にやりと笑ってください!

►『八朔の雪-みをつくし料理帖』(ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

 著:高田郁 角川春樹事務所 2009/05 271p ISBN-13:978-4758434034





 


さて、お次は女性が主役舞台はお江戸です。

上方から出てきた主人公
べっぴんさんではありません。むしろ愛嬌のある顔立ち。
要領もよいほうではないけれど、ひとつだけ天才的なものがある。
それが、彼女――澪(いい名前♪)の場合「味覚」

はい、『料理もの』なんですよ! 料理で『出世もの』なんです… が!!

女性の料理人が認められない江戸時代。(家庭の料理は、女性が作るのに!)
そして、大坂の料亭出身というのも、お江戸では不利。
(前述の味覚の違い、それに食材の地域差。さらに食い手の食材に対する感覚)

さらにさらに!!
男性料理人(大店!)の妨害。

『出世もの』には付き物の苦労だけど、澪ちゃんは筋金入りの苦労を背負い込む。
というのも『雲外蒼天』という苦労が絶えない運勢だから
ただ。
この艱難辛苦を耐え精進を重ねれば、他の誰も見たことのない青空が見れる――
だから、青空をみるために頑張っている。

澪ちゃんの周りの人も苦労人ばかり。
だからこそ、他人にやさしいのかもしれない。

そして、気になる男性も、ちら… ほら… 恋の行方はどうなるんだろう!!
下がり眉、がんばれ!

文責:瑞喜様「星花繚乱~星の彼方へ
 


※以下、管理人より補足。

2011/11/28現在、みをつくし料理帖シリーズは6巻あります。

►『花散らしの雨 みをつくし料理帖』


  著:高田郁 角川春樹事務所 2009/10/15 296p ISBN-13:978-4-75843438-6


►『想い雲 みをつくし料理帖』

 著:高田郁 角川春樹事務所 2010/03/15 288p ISBN-13:978-4-75843464-5

►『今朝の春 みをつくし料理帖』

 著:高田郁 角川春樹事務所 2010/09/15 ISBN-13:978-4-75843502-4

►『小夜しぐれ みをつくし料理帖』

 著:高田郁 角川春樹事務所 2011/03/15 296p ISBN-13:978-4-75843528-4

►『心星ひとつ みをつくし料理帖』

心星ひとつ―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-7 時代小説文庫)

 著:高田郁 角川春樹事務所 2011/08/10 304p ISBN-13:978-4-75843584-0

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『エリゼ宮の食卓』『信長のおもてなし』

更新情報17:『エリゼ宮の食卓』&『信長のおもてなし』
【紹介者:吉野御前様】
 
再びの見参でございます。
今回は、「東西おもてなし比べ」という趣向で二冊ご紹介させて頂きます。


►『エリゼ宮の食卓-その饗宴と美食外交』(新潮文庫)

 著:西川恵 新潮社 2001/05 344p ISBN-13:978-4101298313

 単行本はこちら。
 エリゼ宮の食卓―その饗宴と美食外交  

エリゼ宮と言えば、フランスの大統領官邸
内政は首相が、外交に関する国家戦略は大統領が」というフランス的役割分担を考えれば、その「おもてなし」とは、イコール「食卓外交」そのものを意味すると思って間違いございませんでしょう。
そしてそれはそのままフランスという国が、自国の食文化とその歴史を如何に考え、如何に利用し、如何に諸外国に喧伝しようとしているかを、端的に表したものになります。

ではその「食卓」とは、一体如何なるものなのか?
フランス大統領は、一体何を基準にどういった哲学でもって料理を選択し、相手に出すのか?
しかも、わが国でも「美食」という言葉と硬いイコールで結ばれている、「おフランス料理」を……。
 
本書は、そのあたりを説明した本でございまして、実際に、公式訪問したアメリカ大統領や、我が国の天皇陛下への「おもてなし」がどんなものであったのかという例を出しつつ、その料理と、組み合わされたワインにどんな意味が込められているかを読み解いてくれます。

そこにあるのは、一見すると華麗にして豪華、洗練の極みと言っていい美味の饗宴

しかしその隠し味は、個人の感情よりも国家の利益を優先する冷徹さと、したたかな戦略なのでございます。おお、クワバラクワバラ…。ワタクシなんぞ、そんな料理出されても、喉も通りませんよ。

もっとも、実際に本書内に書かれたメニューの数々、正直ワタクシのような完全無欠の「貧乏人」からすれば「それどんな味?」としか思えませんけどね(苦笑)

ワインなどはもっとそう。1981年のブルゴーニュがどうのこうの、シャトー・ディケムがどうのこうのと言われても、さっぱり…。それよりも、「いくらするの?」って方に興味がいってしまいます。(ツクヅク俗物だ…)
 

上記のような実際の饗宴における料理の話も実に興味深うございますけど、この「美食外交」を裏で支える職人集団の話も面白うございます
 
料理人、執事、ワインの管理人に、食器やグラスの管理人、果てはテーブルクロスの管理人……と、実に様々な職種の方がエリゼ宮では働いています。職人集団とは言っても、一応「大統領官邸」に勤めているわけですから、ちゃんとした公務員。面白い事に、大統領個人に仕えるような職種もあるそうですし、外務省や海軍などからの「出向」扱いの方もいるそうです。

「テーブルクロスの管理人」なんて、無駄に人を雇っているように思えますが、元々エリゼ宮は、かのポンパドゥール夫人の持ち物だったと言う由緒正しき宮殿です。その後のナポレオン時代やパリコミューンの時代を経て現代に伝わっていますので、食器一つ、テーブルクロス一枚にしても、歴史を経た「文化財」なわけです。従って、専門の管理人必要にもなる分けですね。何でも大統領でさえも許可無くは取り出せないほどだとか。

これは料理だけでなく、「フランス」という国の歴史と文化をも饗宴に使っているということだと思います。
 

我々にはこれだけの文化と歴史がある。
我々の歴史が生み出した「食文化」は、これほどに洗練されている。

 
この二点を十二分に見せ付けながら、隠し味に政治を絡める。
本書を読めば、フランスと言う国の自信としたたかさを確認させられること請け合いでございます。
ついでに、如何に自分が「ビンボー人」なのかも……(涙)
 
そうそう、もし本書をお手に取る事がございましたら、合わせて『大使閣下の料理人』という漫画もお読みになることをお勧めいたします。ここにも、かのエリゼ宮の食卓が出て参ります。漫画ですので都合よすぎる展開ではございますけど、フランスの外交戦略を支える料理人集団の誇りとプロ意識を垣間見せてくれますよ?
 
►『 大使閣下の料理人』(モーニングKC全25巻)

 著:かわすみひろし 原著:西村ミツル 講談社 1999/05 227p 
 ISBN-13:978-4063286311

 文庫版(講談社漫画文庫全13巻)はこちら。
 大使閣下の料理人(1) (講談社漫画文庫)  



さて、現代西洋のおもてなし事情から、こんどは我が国へ。
と言っても、首相官邸ではなく、一気に時代を400年ちょっとさかのぼって、戦国時代へ。


►『信長のおもてなし 中世食べもの百科』(歴史文化ライブラリー240)


 著:江後迪子 吉川弘文館 2007/9/21 193p ISBN-13:978-4642056403
 
本書では、中世(主に室町期から戦国期)における日本の支配者階級の日記や文献などから、彼らが食していたモノや食事の形式、贈答品としての食物を紐解き、その食文化を探るというもの

タイトルに「信長」っていうのが入っているのは……まぁ、一種の「ツリ」かもしれません……(苦笑)。
でも一応最初に、タイトル通り明智光秀が本能寺の変を起こす直接のきっかけとなった「徳川家康への饗応」についての考察から始まってます。そこから、当時の「おもてなし」の食事を浮かび上がらせようってとこでしょう。まぁ中世とか室町を最初っから前面に出せば、読者が減りますし、多分イメージもしにくいでしょうから、取っ付きとしては悪くございません(室町好きにはムカつく現象でございますけどね)

さてこの「おもてなし」が、まぁものすごい量なんでございまして、「一体いくつお膳が出るんだ!?」って感じでございます。出されたものすべてを味わうなら、食べるのは一口だけにするしかないと思えるほど。
使われている食材も、まさに山海の珍味。同じ食材も調理法を変えるなど、手が込んでます。筆者も書いておられるとおり、同盟者を丁重にもてなすのに相応しいものだと思いますね。

このメニューから考えれば、光秀が信長から饗応の不手際を詰られたのは彼の手落ちではなく、癇癪もちの信長が一方的に怒ったという説の方が成り立つ気がして参ります。
 
これを入り口に、周防の大大名大内氏の「おもてなし」の膳や、足利将軍が臣下の家へ「御成」になった時の「おもてなし」大名家間での贈答品などを紹介して参るのが本書でございます。

これらを見ていくと、今日のワタクシたちが考えるよりもずっと豊かな食材が当時すでに揃っていた事、そして現代に繋がる「懐石料理の本膳」の原型がすでにあるという事が分かって参ります。

特に驚くのは「獣肉」の豊かさです。
たぬき、うさぎ、かわうそ、かもしか、いのしし、くま…と実にバラエティに富んでます。
仏教思想が広まった後は「獣の肉」は食べない、と思い込んでいましたが、どっこいそんな事はございませんね。むしろ現代のワタクシ達よりも選択肢が広い気さえいたします。だって、シカの肉なんてめったに食べられませんでしょ?これって、フランス料理で言うところの「ジビエ」ってヤツになるんじゃないかと思うのでございますよ。

お魚だって今と殆ど変わりませんし、当然の事ながら、養殖なんてありません。すべて「天然もの(!)」でございますからねぇ。ううう、羨ましい……。おまけに「明石の鯛」なんてブランド品もすでに出来上がっていたようでございます。

お菓子類も、ボチボチ砂糖が入ってきていたり、甘蔓と呼ばれる天然の甘味料を利用したりで、種類も豊富です。名前に中国や朝鮮の影響も見られますね。  

本書を読めば、現在ワタクシ達が食べているものの大半は、すでに室町期に存在していたんだということがよく分かります。

但し、これはあくまで「支配者階級」の話。一般庶民の食生活がもっと貧しいものだったのは簡単に想像できますこと。
が半面で、そういう豊富な食材を大量に生産流通させる力を当時の民衆は持ち始めていた、生産の余剰とそれにともなう商業的な豊かさが芽生えつつあったとも解釈は出来ます。
 
残念な事は、すでにその品物が生産されなくなり、名前しか分からないものも多いこと

調理法もそうで、当時まだ醤油が普及していないので(そう、意外に思われるかもしれませんが、味噌の方が歴史は古いんです)塩と味噌が味付けの基本になるようですけど、それがどんな味かはわからない。味噌にしても、当時の味噌は「食品」の一つで、今のような使用法ではなく、つまんで食べていたそうでございますのでね。
 
何分400年の時がたっておりますので、分からないことも多いようではございますが、この時代に後の食文化を支える芽が出ていたというのは、本書をもって十分に伝わる事と思われます。

 
文責:吉野御前様「一期の夢

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『宇宙戦艦ヤマトモデリングガイド 完全版』

更新情報17:『宇宙戦艦ヤマトモデリングガイド 完全版』
【紹介者:77maru77様】
 

おススメ本紹介に、ヤマトのムック本をセレクトする……。
なんちゅー反則技かと我ながら思うわけですが(笑)、あえてご紹介させていただきましょう。

真っ向勝負の77maru77、みなさまにぜひお勧めしたいのは、「宇宙戦艦ヤマトモデリングガイド 完全版」であります。
 

宇宙戦艦ヤマトモデリングガイド 完全版 (DENGEKI HOBBY BOOKS) (画像なし)

 アスキーメディアワークス 2011/09 173p ISBN-13:978-4048705103


その名の通り、現在までに発売されたヤマト関連模型の紹介・キットの作例が、これでもかという勢いで掲載された逸品。
特段のメカ好きでなくても、持っていて損はない1冊です。


なぜ、あえてヤマト本をご紹介するのか。
それは、おそらく今ここをご覧の方々は、同じヤマトといえども、この手のモノにはあまりご興味がないだろうと思われるからです。
しかし、食わず嫌いはいけません。
「復活篇」や「実写版」がそうであったように、飛び込んでしまえば、そこにはまた新たな素晴らしきヤマトワールドが広がっているのです!


では、右も左もわからない方のために、まずは基礎知識を。

現在、いくつかの月刊模型誌が発行されています。「ホビージャパン」「電撃ホビーマガジン(電ホ)」「モデルグラフィックス」の3誌はその代表格。

►「ホビージャパン」

 ホビージャパン;月刊版 2011/10/25 ASIN:B005T5W5PY

►「電撃ホビーマガジン(電ホ)」(2011/12月号)

 アスキーメディアワークス;月刊版 2011/10/25 ASIN:B005V0RFZC

►「モデルグラフィックス」(2011/12月号)

 大日本絵画;月刊版 2011/10/25 ASIN:B005SGXGY8

模型誌って何? とお思いかもしれません。
新作模型情報、作り方・改造方法の解説などが掲載された、プラモデル・フィギュアに関する総合情報誌である、といったら良いでしょうか。
各誌、ターゲット層は微妙に異なりますが、割合としてはガンプラの話題が多く、その他ロボット系アニメや特撮ヒーロー関連、車両・艦船などの模型の話で構成されています。

今回ご紹介する「モデリングガイド完全版」は「電ホ」のムック本で、2007年に刊行された「宇宙戦艦ヤマトモデリングガイド」の増補版。

すごいのは、その増補具合です。
2007年版109ページに対し、完全版は173ページ! 
しかもお値段据え置き2,500円(税別)! 

よっ、太っ腹!!

「復活篇」のディレクターズカット版も、後出しならばこのくらいの気合を見せていただかなくては(違)。


ではなぜこの時期、4年の時を経て完全版が出たのか。

それには2010年12月、実写版ヤマト公開に世の中が揺れていたころ起きた、ヤマト模型界における大事件が関係しています。
長い間、沈黙を続けていた、“スタンダードなヤマトの新作プラモ”=「1/500スケールヤマト」が、満を持して堂々発売となったのです。

►「1/500スケールヤマト」


バンダイ 1.1Kg YAMATO 2010/12/5 ASIN:B0045T1JDY

……ここで私はつい熱くなり、いかにこれが大事件だったかを書き綴ってみたのですが、読み返してみたらあまりにもウザいので、すっぱり削除することにしました。

とにかく1983年の完結編以降、単発企画モノでしか出てこなかったヤマトのプラモが、「普通に子ども達がお店に行ったら置いてある」、そういう扱いで、完全新作として発売されたのです。

「SPACEBATTLESHIPヤマト」の公開とあいまって、2010年12月の模型各誌は、ヤマトが席巻しました。
表紙にヤマト。見返しにヤマト。特集にヤマト。
くぅっ、泣ける……。

2007年版の「モデリングガイド」は、当時企画モノとして大きな話題となった、ギミック満載の豪華モデル・1/350ヤマトをメインに据えた構成でしたが、今回の「完全版」では、この1/500モデルを巻頭に据えています。
言い換えれば、お値段据え置き大増強158%の完全版を出さずにはいられないほど、この1/500ヤマトの登場は大きな意味を持っていた、ということなのです。

2011年5月の「ヤマトファンのつどい」(「ヤマトパーティ2012お知らせblog」に参加された方は、会場入り口横に、無防備な姿で展示されていた模型をご覧になったかもしれません。
あそこにポンとさりげなく置かれていた「実写版CG風塗装のヤマト」は、この1/500ヤマトであり、「電ホ」の特集として掲載された作例でもあり、「モデリングガイド完全版」の表紙を燦然と飾っているものです。

また、青山にオープンした「CAFE CRWE」にいらっしゃればいつでも、このヤマトをはじめ、どうやったらここまで作り込めるのだろうと凝視せざるを得ない数々の掲載作品を、実際にご覧になることができます(感涙)。

 

――はっ。(と我にかえる……)
プラモの話ではなく、本の紹介をしなくては。


模型の本のどこが面白いかといえば、そのマニアックさ、に尽きるのかもしれません。

私はこのように知った風に語ってはいますが、実はメカのことはサッパリわかりません。
模型制作も、素人以下のレベルです。
どうやって作ったか、どこにどうこだわったのか、解説文を読んでも、わからないことだらけです。

でも、模型が好き、ヤマトが大好きな人たちが作った、こだわりの作品を見るのはとても楽しい

例えば市販のキットを改造して、自分が思い描くフォルムに近づける作業は、2次創作でヤマトの物語を書く(描く)ことに似ています。
設定や画像を徹底して研究し、さらに専門的知識と技術と想像力を動員して「俺ヤマト」を形作っていく、その想いには大いに共感するのです。

ヤマトだけではありません。
人気のガミラス艦はもちろん、敵・味方、戦艦から艦載機、波動砲のトリガーに至るまで、劇中に登場するモノへ惜しみなく注がれた深い愛情の数々。
ひとつひとつのパーツのディティールアップをはかり、ときにリアリティを追及し、ときに雰囲気重視を選択し(これ重要)、創意工夫をこらした作品は、見ていてニヤニヤせざるを得ないパワーを放っています。
添えられた解説や制作過程を紹介した記事もしかり。ヤマト世界を知り尽くし、洒落とツッコミで彩ったこだわりの文章には、思わずニヤリとしてしまいます。

そこに見えるのは、ヤマトへの否定ではなく、しょーがないよなぁと笑いつつあきれつつ、好きで好きでたまらない、その気持ち。
ヤマトは物語やキャラクターなどの矛盾やホコロビを指摘されがちですが、メカニックに関していえば、もう、フォローしようのない設定上の「変」が、至るところにあるわけです。
立体物の制作は、最低限の整合性がないとできない作業。途方もない苦労が生じます。
そこを、むしろ楽しみながら埋めていく。こんちくしょーと思いながらも、ヤマトが好きだから、です。

さらに私がイイなぁと思うのは、そんなモデラー各氏が書く文章が常に、「俺たちちょっとヘンだよね」っていう空気を醸し出していること(笑)。
やっていることは非常にテクニカルなのです。知識も深い。出来あがったものは、市販のキットと元は同じだとは思えないほど。
それなのに、ちょっと引いているというか(笑)。
「ま、こんな感じですかね」と最後にスカしてみせる、どこかで「こんなことに一生懸命になっちゃって」と自分を客観視し「大したことないっすよ」と笑ってみせる、そんな雰囲気。
心の底では燃えているんだけれども、そこに溺れないでいようという意識がやけにみえる。そしてきっと、読者も同じ気持ちでいる。
なんとも不思議で心地いい連帯感、なのです。

工作班って、きっとみんなこうなんだろうなぁ、と思ったりします。
情熱と柔軟性と冷静さが同居している人たち。
ぜひ「モデリングガイド」を手に取り、その素敵な世界を感じていただきたい! と思います。

惜しむらくは、このムック本の帯に「【ファースト】から復活篇までのすべてを徹底して網羅した……」とあること(笑)。
ガンダムとは違うのだよ、ガンダムとは! と一応ツッコミを入れておきましょう。



なお、ライバル誌である「ホビージャパン」からも、2011年3月にヤマトの模型作品集「宇宙戦艦ヤマト模型作品集」が発売されています。お値段同じく2,500円(税別)。

►「宇宙戦艦ヤマト模型作品集」(ホビージャパンMOOK 385)

 ホビージャパン 2011/3/10 153p ISBN-13:ISBN-13: 978-4798602004

ホビージャパン誌上で不定期連載されていた特集の再掲ですが、こちらはマニアックさでいえば、さらに上を行く面白さ。
ヤマト模型の網羅、初心者向けの指南という点では「モデリングガイド」に一歩譲りますが、超絶テクニックを駆使した作例、劇中には登場しない妄想ガルマンガミラス艦創作など、突き抜けちゃった感たっぷりの力作が見られます。

文責:77maru77様「響鬼を語ろう

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