メディアワークス文庫、というのがラインアップで出たとき、とてもとても嬉しかった。世の中の流れにビビッドな出版社でもあるし、ラノベは読むが、それに飽き足らない人や成長した少年少女たちが読める本がないなと思っていた頃だった。
装丁もとても素敵で、イラストやつくりにも手抜きがない。
あぁ、活字中毒患者丸出しの書き出し、、、(<自己嫌悪)。
その中で、この春。この『ビブリア古書堂の事件手帖』を見つけた。
►『ビブリア古書堂の事件手帖-栞子さんと奇妙な客人たち』
著:三上延 アスキーメディアワークス 2011/03/25 307p ISBN-13:978-4048704694
主人公の青年(プロローグでは少年だが)が、見かけた風景そのままに、ヒロイン・栞子(しおりこ、と読むのだ)さんが本に没入する横顔が美しいのである。
レコードやCDで「ジャケ買い」ってのがあるけれども、本には必ず「装丁買い」というのもあるので、この“絵”、そしてタイトルは素晴らしい、と思わず手に取る。妙にアニメ絵でないのもよろしいんではないかと。
鎌倉の線路沿い。
というシチュエーションがそれもまたよろしいのでは。古書店というのは、面白い舞台になり得る設定だけれど、このミステリーの面白いのは、「本にまつわるミステリ」なのではなく、「古書そのものの持つ物語」を読み解いていくことだ。
それと、この作家さんが上手いなと思うのは、短編で一つ一つの物語が解決しているだけでなく、その状況にかかわるようになる主人公と、さらには主人公と栞子さんとのかかわり、古書店に訪れるお客さんとの事件ともいえない事件が解決していくうち、全体がひとつの物語になっていて、最後に、主人公が客観者であり手伝いのアルバイトでいられなくなっていくところ。
これの“意味”については、ネタバレになるし、さすがにミステリのネタバレをするほど不親切ではないので、これだけにする。
栞子さんと主人公のキャラクタがとても素敵で、それだけでも読み進めるのが楽しい。
表紙絵を見ていると、うつくし~おね~さんのように見えるが、実はシャイで赤面症に近い人見知りの栞子さん。本の知識はものすごくて、さらには本に関する限り、真田志郎ばりの頭脳を示す。実は“人”に対しても鋭い考察と観察眼を持つ人だというのがわかってくる(<ってこのくらいはいいよね)。
本、人、本を読む。活字偏愛というよりは、「本そのもの」への愛情に溢れた本編で、読後感もとてもよろしいです。そのわりに、なんというかな、車椅子探偵ジャンルにありがちな硬さがなく、読みやすい。
って褒めすぎかなぁ。
・・・
そういえば、最終章で、、、主人公と栞子さんの距離がちょっと変わる。それは本編の謎に関係があるので、言えないのですが。
この続きが読みたいなぁ、、、なんて思っていたら。
やっぱり好評だったんでしょうね、10月25日に「2」が出た模様。
さっそく、帰りに書店に行ってこよう(^_^)。皆さまも、どうぞ♪
►『ビブリア古書堂事件手帖2-栞子さんと謎めく日常』
著:三上延 アスキーメディアワークス 2011/10/25 261p ISBN-13:978-4048708241
さて私は前振りが長くていけませんね。
先般、ここの管理人が惚れ込んでいる『隠蔽捜査』は、私が紹介したと威張ったが、この『配達あかずきん』は逆に、ポトスさんに紹介していただいた。書店好き、図書館好きの彼女ならではのチョイスともいえるが、棚に本が並んでいる店に入ると心の底から嬉しくなる“同病”のワタクシとしては、当然買って、一気読みしたことは言うまでもない。
『配達あかずきん』の方は、どこにでもある駅ビル内の、成風堂という書店での出来事。事件とも言えない事件、本にまつわるものや本を通じてのもの、その仕掛けの仕方もいろいろ小技が利いていて楽しめることどもを、書店員・杏子と、アルバイトの多絵のコンビが、わずかなヒントをもとに解いて行く。
ほかのお店とのかかわりで、駅ビルならではのエピソードがあったり、本の配達や細かい作業内容で、よくここまで書店の仕事が描かれているなぁなんていうところも楽しめる(書店の仕事、といことそのものが人に面白がられるのが面白かったと著者も言っている)。よく取材しているなぁと思ったら、著者は書店員出身だったのだね。どうりで、人間観察が鋭く、また温かく、なんだか本に乗せてシアワセを届けてくれるコンビのような気分になった。
けっこう血なまぐさい話も起こるのだけれども、誰も死にません(笑)。
人気が出て、続編ができたのもわかりますねぇ、続編と番外編はまだ読んでないので、これから書店に行く楽しみってのもあります。
イラストもとても雰囲気が出ててかわいいっすよ。
►『平台がおまちかね』(創元推理文庫)
著:大崎梢 東京創元社 2011/09/10 312p ISBN-13:978-4488487041
これも、一気に読めます。
一本一本の短編が重なってひとつの物語になっていく。手法は同じですが、味わいがまた違う。こちらは外回りをしている所為か、杏子さんたちより多少、波瀾万丈な度合いが高いようですが(笑)。
日々頑張っている井辻くんを見ていると、元気も貰えます。活字文化や出版業は将来がない、なんて言われて久しい中、本当に元気が貰えるんです。やっぱりいいよね、本っていいよね。
私が言っても説得力、ないですか?(笑)。
読後感も良いし、仕事や家事の合間に気軽に読めますので、是非、ご一読を。
文責:綾乃様blog「新月の館」
【続き・1】
で、このブックフェアが続いていると限りなく本が増える気のする綾乃ですが(^_^;)
このひと月で、文庫本の“まとめ買い”に出かけたのは三度目。
一度目に入手した中に、『晩夏に捧ぐ』があります。
►『晩夏に捧ぐ』
著:大崎梢 東京創元社 2009/11/10 ISBN-13:978-4488487027
単行本はこちら
晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)
『配達あかずきん』の続編で、以前、勤めてた杏子の友人から「書店に幽霊が出る」解決してくれないか、という依頼の手紙が来る。電話で話すと、すっかり「探偵扱い」乗り気でない杏子に対して、すっかり乗り気の妙絵と共に、車上の人になった2人は地方の商店街でしっかりとがんばる書店経営者親子に出会う。。。というものです。
『…あかずきん』が短編の集合体なら、こちらは通常のミステリー。
幽霊の出た原因を探る、というのだけならホラーか眉唾か、ということで実は私はあまり好きなネタではないのですが、著者も、また登場人物も、本当に書店を愛してる。
書店の描写や、それにまつわる小さなエピソードが、つい“読ませて”くれるわけです。
で、この作品には、書店を愛する人しか出てこないんですねぇ。
書店員、バイト、お客さま、商店街の皆さん、営業マン、取次。次作では作家や取次、出版社のヒトまで登場。
(出ないのは編集者くらいか・笑、、、普通と逆で面白い)
関係者に順番に話を聞いていく、というのも刑事さん顔負けの活躍(ところで、このお話には、杏子ちゃんとイイカンジになる刑事さんも登場します←ありがち ただ、当面は進展しそうにありませんが・笑 お気の毒)。
一気に読めますので、まぁ夏はとっくに過ぎてしまいましたが、ほっこり温まるのでこの季節にも良いかも。
高原列車に乗ってどっかへ出かけたくなる。。。のは、単にテツだってか!?
綾乃・追記1/19 Nov,2011
【続き・2】
さらに一昨日。久しぶりに書店でゆっくり“本を物色”するという時間を過ごしました。
大雨になるなぁ、早く帰らないとなぁ、、、と思いながら、なかなか棚の前というのは楽しくて時間の過ぎるのも忘れてしまいます(<私って、こう書いてると本当に杏子さんと“同病”だわ)。
そうすると。
ありましたありました、もう文庫になっていたのね、のシリーズ3冊目。
『サイン会はいかが?』
►『サイン会はいかが?』
著:大崎梢 東京創元社 2010/03/11 ISBN-13:978-4488487034
単行本はこちら
サイン会はいかが?―成風堂書店事件メモ (ミステリ・フロンティア)
『晩夏…』で遠出をしたコンビですが、今度は成風堂に戻ってきます。
そういえば、ですねぇ。この成風堂さん。駅ビルの5Fということになっているじゃないですか。
うちの会社の最寄駅にある大手チェーンのA書店に、とっても雰囲気が似ているんです。
もちろん、成風堂はチェーンじゃないし、文具も扱ってないし、もう少し都心部じゃない駅だと思うし、、、
なのですが、まったく売り場の雰囲気がそっくりなんだなぁ。。。とまぁ、
きっと読者の3分の1くらいが、「うちの近所の書店に似てる」と思われるんじゃないか、
それがまた著者の上手さのような気もするんですね。
この3作目は、さらに書店員の仕事が細かく書き込まれています。
それだけ読んでても面白いです。
ミステリー度は、1作目に比べると若干低いですが(やっぱり1件だけ血なまぐさい事件が起こります・過去だけど)、楽しみが減るわけではありません。
表題作を含め5本の短編です。是非、お読みくださいね♪
綾乃・追記2/20 Nov,2011
誰かのお勧め本を読む。