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宇宙図書館 秋の夜長に

宇宙図書館 7thBOOKFAIR 秋の夜長に のコンテンツの1つ、「オススメ本」のコーナーです。

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『ビブリア古書堂の事件手帖』

更新情報16:『ビブリア古書店の事件手帖-栞子さんと奇妙な客人たち』 著:三上延
【紹介者:綾乃様】
 
 

メディアワークス文庫、というのがラインアップで出たとき、とてもとても嬉しかった。世の中の流れにビビッドな出版社でもあるし、ラノベは読むが、それに飽き足らない人や成長した少年少女たちが読める本がないなと思っていた頃だった。

装丁もとても素敵で、イラストやつくりにも手抜きがない
あぁ、活字中毒患者丸出しの書き出し、、、(<自己嫌悪)。

その中で、この春。この『ビブリア古書堂の事件手帖』を見つけた

►『ビブリア古書堂の事件手帖-栞子さんと奇妙な客人たち』
 著:三上延 アスキーメディアワークス 2011/03/25 307p ISBN-13:978-4048704694

主人公の青年(プロローグでは少年だが)が、見かけた風景そのままに、ヒロイン・栞子(しおりこ、と読むのだ)さんが本に没入する横顔が美しいのである。

レコードやCDで「ジャケ買い」ってのがあるけれども、本には必ず「装丁買い」というのもあるので、この“絵”、そしてタイトルは素晴らしい、と思わず手に取る。妙にアニメ絵でないのもよろしいんではないかと。

鎌倉の線路沿い。
というシチュエーションがそれもまたよろしいのでは。古書店というのは、面白い舞台になり得る設定だけれど、このミステリーの面白いのは、「本にまつわるミステリ」なのではなく、「古書そのものの持つ物語」を読み解いていくことだ。

それと、この作家さんが上手いなと思うのは、短編で一つ一つの物語が解決しているだけでなく、その状況にかかわるようになる主人公と、さらには主人公と栞子さんとのかかわり、古書店に訪れるお客さんとの事件ともいえない事件が解決していくうち、全体がひとつの物語になっていて、最後に、主人公が客観者であり手伝いのアルバイトでいられなくなっていくところ。

これの“意味”については、ネタバレになるし、さすがにミステリのネタバレをするほど不親切ではないので、これだけにする。

栞子さんと主人公のキャラクタがとても素敵で、それだけでも読み進めるのが楽しい。
表紙絵を見ていると、うつくし~おね~さんのように見えるが、実はシャイで赤面症に近い人見知りの栞子さん。本の知識はものすごくて、さらには本に関する限り、真田志郎ばりの頭脳を示す。実は“人”に対しても鋭い考察と観察眼を持つ人だというのがわかってくる(<ってこのくらいはいいよね)。

本、人、本を読む。活字偏愛というよりは、「本そのもの」への愛情に溢れた本編で、読後感もとてもよろしいです。そのわりに、なんというかな、車椅子探偵ジャンルにありがちな硬さがなく、読みやすい。
って褒めすぎかなぁ。

                   ・・・
そういえば、最終章で、、、主人公と栞子さんの距離がちょっと変わる。それは本編の謎に関係があるので、言えないのですが。
この続きが読みたいなぁ、、、なんて思っていたら。

やっぱり好評だったんでしょうね、10月25日に「2」が出た模様。
さっそく、帰りに書店に行ってこよう(^_^)。皆さまも、どうぞ♪
 

►『ビブリア古書堂事件手帖2-栞子さんと謎めく日常』 

 著:三上延 アスキーメディアワークス 2011/10/25 261p ISBN-13:978-4048708241




文責:綾乃様blog「新月の館

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『配達あかずきん』&『平台がおまちかね』《追記有り》

更新情報14:『配達あかずきん』&『平台がおまちかね』 著:大崎梢
【紹介者:綾乃様】
 
創元社といえば、昔からのSF読みなら、絶対に足を向けて寝られないくらいお世話になった本の数々を出版してきたカイシャである。後年、その地位はハヤカワミステリに取って替わられたとはいえ、あの時代、未知のものをどんどん翻訳して日本に入れ、われわれの先輩たちを狂喜乱舞させた功績は、とっても素晴らしいと思う。
うちにもまだ、昔ながらのラインアップで早川で翻訳されなかったものは、大事に本棚に並んでいる(カバーかけてあっても黄色くなってるけどね)。


►『配達あかずきん-成風堂書店事件メモ』


 著:大崎梢 東京創元社(創元推理文庫) 2009/03/20 ISBN-13:978-4488487010

 単行本(ミステリ・フロンティア)はこちら
 配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)

 


さて私は前振りが長くていけませんね。

先般、ここの管理人が惚れ込んでいる『隠蔽捜査』は、私が紹介したと威張ったが、この『配達あかずきん』は逆に、ポトスさんに紹介していただいた。書店好き、図書館好きの彼女ならではのチョイスともいえるが、棚に本が並んでいる店に入ると心の底から嬉しくなる“同病”のワタクシとしては、当然買って、一気読みしたことは言うまでもない。

『配達あかずきん』の方は、どこにでもある駅ビル内の、成風堂という書店での出来事。事件とも言えない事件、本にまつわるものや本を通じてのもの、その仕掛けの仕方もいろいろ小技が利いていて楽しめることどもを、書店員・杏子と、アルバイトの多絵のコンビが、わずかなヒントをもとに解いて行く。

ほかのお店とのかかわりで、駅ビルならではのエピソードがあったり、本の配達や細かい作業内容で、よくここまで書店の仕事が描かれているなぁなんていうところも楽しめる(書店の仕事、といことそのものが人に面白がられるのが面白かったと著者も言っている)。よく取材しているなぁと思ったら、著者は書店員出身だったのだね。どうりで、人間観察が鋭く、また温かく、なんだか本に乗せてシアワセを届けてくれるコンビのような気分になった。

けっこう血なまぐさい話も起こるのだけれども、誰も死にません(笑)。
人気が出て、続編ができたのもわかりますねぇ、続編と番外編はまだ読んでないので、これから書店に行く楽しみってのもあります。
イラストもとても雰囲気が出ててかわいいっすよ。


►『平台がおまちかね』(創元推理文庫)

 著:大崎梢 東京創元社 2011/09/10 312p ISBN-13:978-4488487041
 

 単行本(創元クライム・クラブ)はこちら
  平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)


 

一方、「平台がおまちかね」の方は、自分で書店で見つけた本。
タイトルに惹かれました。一見して、「書店営業の話」だと思ったから……というのは、やっぱし自分もそっち業界の人間だからかもしれないけど。

書店でアルバイトしたいと熱望したこともあれば(学業が忙しくて、一定時間勤めなければならない仕事は無理でしたが)、就職してから研修で売り場に立ったこともあり、また大手の書店のフロア長さんにいろいろ教えを受けた時代もありました。

たぶん、そんなこんなで、ふつうの私どものような仕事をしている人間よりは“書店員”や書店の仕事の実態を知っている方ではないかと思います。だからこれ、きっと業界受けするなぁと思いました。一見、地味な仕事、しかし本当はとても重要で、出版社内では実は発言力を持っている部署。
一般の人がイメージする“出版社の人”といえば編集や、または販売とかだと思うけども、地味ですが、大切で面白みのあるのが書店営業という仕事なのです。
主人公が、“ある理由があって”編集職に就けない、というのもひとつの謎で、最初気になって仕方なかったんですが、ある物語の中で、さりげなく謎解きもされます。望んで書店営業に行った新人が主人公。
それをこんなにほのぼのと描いてくれる。

「…あかずきん」が女性の話なら、こちらは男性の話。主人公の井辻智紀くんだけでなくて、編集へ引き抜かれて行ってしまった先輩やその謎、上司や仲間…。一番面白いのは、他の出版社のライバルであり仲間である人たちとのいろいろなエピソード。マドンナの謎。

これも、一気に読めます。
一本一本の短編が重なってひとつの物語になっていく。手法は同じですが、味わいがまた違う。こちらは外回りをしている所為か、杏子さんたちより多少、波瀾万丈な度合いが高いようですが(笑)。

日々頑張っている井辻くんを見ていると、元気も貰えます。活字文化や出版業は将来がない、なんて言われて久しい中、本当に元気が貰えるんです。やっぱりいいよね、本っていいよね。
私が言っても説得力、ないですか?(笑)。

読後感も良いし、仕事や家事の合間に気軽に読めますので、是非、ご一読を
 

文責:綾乃様blog「新月の館
 

【続き・1】

で、このブックフェアが続いていると限りなく本が増える気のする綾乃ですが(^_^;)
このひと月で、文庫本の“まとめ買い”に出かけたのは三度目。

一度目に入手した中に、『晩夏に捧ぐ』があります。
►『晩夏に捧ぐ』

 著:大崎梢 東京創元社 2009/11/10 ISBN-13:978-4488487027

 単行本はこちら
 晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)




『配達あかずきん』の続編で、以前、勤めてた杏子の友人から「書店に幽霊が出る」解決してくれないか、という依頼の手紙が来る。電話で話すと、すっかり「探偵扱い」乗り気でない杏子に対して、すっかり乗り気の妙絵と共に、車上の人になった2人は地方の商店街でしっかりとがんばる書店経営者親子に出会う。。。というものです。

『…あかずきん』が短編の集合体なら、こちらは通常のミステリー
幽霊の出た原因を探る、というのだけならホラーか眉唾か、ということで実は私はあまり好きなネタではないのですが、著者も、また登場人物も、本当に書店を愛してる。
書店の描写や、それにまつわる小さなエピソードが、つい“読ませて”くれるわけです。
で、この作品には、書店を愛する人しか出てこないんですねぇ。
書店員、バイト、お客さま、商店街の皆さん、営業マン、取次。次作では作家や取次、出版社のヒトまで登場。
(出ないのは編集者くらいか・笑、、、普通と逆で面白い)

関係者に順番に話を聞いていく、というのも刑事さん顔負けの活躍(ところで、このお話には、杏子ちゃんとイイカンジになる刑事さんも登場します←ありがち ただ、当面は進展しそうにありませんが・笑 お気の毒)。

一気に読めますので、まぁ夏はとっくに過ぎてしまいましたが、ほっこり温まるのでこの季節にも良いかも。
高原列車に乗ってどっかへ出かけたくなる。。。のは、単にテツだってか!?

綾乃・追記1/19 Nov,2011

【続き・2】

さらに一昨日。久しぶりに書店でゆっくり“本を物色”するという時間を過ごしました。
大雨になるなぁ、早く帰らないとなぁ、、、と思いながら、なかなか棚の前というのは楽しくて時間の過ぎるのも忘れてしまいます(<私って、こう書いてると本当に杏子さんと“同病”だわ)。

そうすると。
ありましたありました、もう文庫になっていたのね、のシリーズ3冊目。
『サイン会はいかが?』

►『サイン会はいかが?』

 著:大崎梢 東京創元社 2010/03/11 ISBN-13:978-4488487034

 単行本はこちら
 サイン会はいかが?―成風堂書店事件メモ (ミステリ・フロンティア)

『晩夏…』で遠出をしたコンビですが、今度は成風堂に戻ってきます。

そういえば、ですねぇ。この成風堂さん。駅ビルの5Fということになっているじゃないですか。
うちの会社の最寄駅にある大手チェーンのA書店に、とっても雰囲気が似ているんです。
もちろん、成風堂はチェーンじゃないし、文具も扱ってないし、もう少し都心部じゃない駅だと思うし、、、
なのですが、まったく売り場の雰囲気がそっくりなんだなぁ。。。とまぁ、
きっと読者の3分の1くらいが、「うちの近所の書店に似てる」と思われるんじゃないか、
それがまた著者の上手さのような気もするんですね。

この3作目は、さらに書店員の仕事が細かく書き込まれています。
それだけ読んでても面白いです。
ミステリー度は、1作目に比べると若干低いですが(やっぱり1件だけ血なまぐさい事件が起こります・過去だけど)、楽しみが減るわけではありません。
表題作を含め5本の短編です。是非、お読みくださいね♪

綾乃・追記2/20 Nov,2011

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『中原中也詩集』

更新情報14:『中原中也詩集』[その他]
【紹介者:まろん様】
 
詩というものは、人それぞれ、その時々の心の内によってどんな受け取り方もできるものだと思います。
もちろん、作者の伝えたかったものや考え、ちゃんとした解釈が存在するものではあるけれど、それを超えて自分の心の内側を映し出す鏡のようになる場合もあるのではないか…と思うことがあります。


►『中原中也詩集』
 新潮社 2000/03 ISBN-13:978-4101290218
 

中原中也記念館HP
 記事中の「中原中也の詩歌をさがす」はこちらから使わせていただいています。(管理人)


中原中也の詩に初めて触れたのはいつのことだったでしょうか。
国語の授業だったかもしれないし、何かの記事だったかもしれないし、それがいつであったかも、どんな詩であったのかも記憶は定かではありません。
印象に残っていないということは、私にとってそれは大きく心に響くものではなかったという証なのでしょう。
 
その後、ちゃんと意識して中原中也の作品を読んだのは大学生の頃でした。
文学部にいた友人の卒論のテーマが「中原中也」。
何気なく読んだことを覚えています。
それが「汚れちまった悲しみに」。(中原中也の詩歌をさがす汚れつちまつた悲しみにで検索してください)
読後に何を思ったかまでは覚えていないけれど、それを読んだことだけはしっかりと記憶に刻み込まれました。
 
思っていることというのは誰かに通じるものなのでしょうか。
それからしばらくして、引越しを控えた知人から何冊か本を譲り受けたのですが、その中に中原中也の詩集があったのです。
それはそのまま私の本棚に並ぶこととなりました。
ふとしたときに、それに手を伸ばすことがあるのですが、その時によって、どの詩が心に響くのかも、何を思うのかも異なります
それはその時点での自分の心が見せる景色なのだろう、と漠然と感じています。
 
 
いつの頃からでしょうか。
ヤマトファンの性とも言えるのか…
ドラマや映画、本の中に「ヤマト」を感じることが増えたような気がするのです。
全然関係ないドラマなのに、何気ないシチュエーションやセリフにヤマトを連想してしまうことがああったり…。
それは本の中でも同様で…最近は中原中也の詩集を開くと、「ヤマトだな…」と思うようになってしまいました。
 

『春日狂想』という、誰もが一度は目にしたことがあるであろう詩があります。
中原中也の詩歌を探す

“愛するものが死んだときには 自殺しなけあなりません”
で始まるこの詩。

なぜだか「完結編」を思い浮かべてしまうのです。
古代くんが死んだと思い込んだユキがコスモガンを自分に向ける姿が脳裏をよぎります。

けれど、この詩のその後の部分を読むと、私の中には「永遠に」の守さんの姿が浮かぶこともあります。
彼が自爆をしたことは、果たして奉仕の心だったのかどうかはわかりませんけど。
本当のところはよくわからないのですけれどね。
それでもなぜだか、この詩は守さんによく似合う、と思ってしまうのはなぜでしょうか。
何度も考えてみるけれど、そこのところは自分でもよくわかりません。
もちろん、この詩をもっと先まで読み進めれば、全然守さんじゃないよなぁ…と思うのですけれど、最初の部分に関してはどうしても思わずにはいられないのです。
 
 
そして、私の好きな詩のひとつには「湖上」があります。
中原中也の詩歌をさがす
非常にリズム感の良い詩で、これを音読すると実に気持ちが良いのです。

そしてなぜだか、ユキが古代くんに語りかける光景が目に浮かびます。
静かな湖面に浮かぶ小さな舟にふたりが乗っていて、古代くんの話に耳を傾けるユキ。
そんなシチュエーションがよく似合う気がしてしまうのはどうかしているのでしょうか(笑)
なぜそんなことを思ってしまうのか、自分でもとても不思議なのだけれど。
 
 
 
そして。
一番好きな詩が『月夜の浜辺』です。
中原中也の詩歌を探す

この詩には古代進が良く似合う、となぜか思いました。
「復活篇」アクエリアスを見上げる彼の姿と、この詩が見せる浜辺の光景はとても似ているような気がするのです。
拾ったボタンが何なのか、それは何かひとつこれ、とは言えないとは思います。
彼にとっての大切なもの、失ってしまったもの、思い出…いろんなものがあって、そのどれもがよく似合うような気がするのです。

そんなことを思ったとき。
それは必ずしも古代くんだけじゃないなぁ…とふと気づきもしたり。
ヤマトの世界では、誰ひとりとして何も失っていない人などいないのだから。
だから誰を当てはめてもしっくりとくるのかもしれません。
 
 
この詩集には彼の詩がとてもたくさん収められていて、まだまだヤマトを感じることができるものもたくさんあります。
けれどそれは、読み手それぞれの感性によっていろんな景色を見せてくれることでしょう
彼の詩の中にヤマトの世界を探す…そんな楽しみ方も面白いですよね。
文責:まろんblog「Serendipity

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『王家の紋章』&『ベルサイユのばら』

更新情報11:『王家の紋章』&『ベルサイユのばら』[歴史・時代/comic]
 
【紹介者:吉野御前様】

昭和50年代に歴史好きになった人へ
 
物事にはすべて「出会い」と申すものがございます。
現在歴史おたくを自認するワタクシでございますが、これだって「おぎゃあ」と生まれた時からこうだったわけではございません。小学生のみぎり、ふたつの漫画に出会ったことが、ヤマト歴とほぼ同等の30年ちょっとに及ぶ(!)歴史おたく歴のスタートでございました。
で、本日はそのワタクシのエポックな漫画をご紹介仕ります。


※ネタバレ有りのご紹介となっております。ご注意下さい。※

 
►『王家の紋章』 (全56巻)


 著:細川智栄子 秋田書店 1977/02 208p ISBN978-4253070607

 文庫版はこちら(全17巻)
 王家の紋章 (1) (秋田文庫)
 
連載開始はなんと昭和51年(!)。
今年で35年目を迎える長寿作品でございまして、各エピソードごとに連載と休載を繰り返し、現在では単行本56巻、文庫で17巻を数えております。
ま、文字通り少女漫画界屈指の大長編。おそらくこれに匹敵するのは、「ガラスの仮面」ぐらいでございましょう。
ストーリーは至ってシンプル、且つ少女漫画の王道を行くようなもの。
『エジプト留学中のキャロル・リードが、古代エジプトへとタイムスリップ。紆余曲折を経て、若きエジプトのファラオ、メンフィスと愛し合うようになる』というものでございます。

現代人であるキャロルは、古代にはない知識を持つ上「金髪碧眼」の美少女であるために「ナイルの姫君」と呼ばれ、メンフィス以外からも、ともかくモテにモテまくります。
その結果、あっちこっちの王様&王子様達から、ラブコールというにはいささか強引なお誘いが雨あられと降り注ぎ、しょっちゅう「拉致監禁」の憂き目をみるのです。

実際彼女の日常といえば、エジプトでメンフィスとイチャイチャしているか(え~い、バカップルめ!)、エジプト以外の国に拉致監禁されているか(いい加減に学習してほしい)、現代に戻って「何も覚えていないの…」と古代にいたころの記憶を無くしているかしかないんでございますよ、恐ろしいことに。

しかし彼女を拉致する相手、これがもう凄いとしか言いようのないラインナップ。
現代のトルコにあり、古代史上最初に鉄器の製造に成功した『ヒッタイト』の王子にして、冷静沈着(だったはず…なのに)なイズミル王子
現在のイラク、当時の北部メソポタミアにあった獰猛な民族『アッシリア』の王女好きのアルゴン
同じく現在のイラク、当時のメソポタミア南部にあり、砂の嵐に囲まれていた…かどうかはわかりませんが、バビルの塔で有名な『バビロニア』の狡猾な策士、ラガッシュ王。   
古代ギリシャ文明の花、ラビリンスとミノタウロスの神話で知られる『ミノア』の少年王、病弱でマザコン気味のミノス
これ以外にも、拉致監禁はしてませんが、現代のエチオピアにあたる『アビシニア』(猫の名前になってますね)、『古代インダス』、『メディア』、『リビア』、女戦士の国『アマゾン』に、都市国家『アテネ』に『ミケーネ』、「トロイの木馬」で名高い『トロイ』と、実在伝説含めて、もう古代史好きなら絶対に興味を持つような豪華絢爛な王様&王子様達ばかり。しかもそれぞれが、典型的なヒーローのライバルキャラ属性を帯びているのでございますよ。

そういうライバル達に浚われた愛するキャロルを救い出そうとすれば、当然戦争にもなります。一体シリーズ中で何回戦争が起きた事か! 歴史なんか、もう変えまくりでございますともさ。

またメンフィスは、「勇猛果敢」といえば聞こえはいいのですけれど、要するにやんちゃ坊主の俺様でございますのでねぇ…。
まったくもってはた迷惑極まりないカップルでございますよ。

しかしまぁ、いかなる逆境でも絶対に助けに来てくれるヒーローは、やっぱりいつの時代も女の子の夢でございますし(ここンとこ、世の男性はしっかり胸に刻むべし)、「3000年の時を超えた恋」っていうのにも、うん、うっとり……。

そこへ異文化、異文明がもつエキゾチズムや、謎に満ちた古代史のロマンまで加わったのがこの漫画でございます。今や母娘二代のファンがいるというのも、むべなるかな、といったところでございましょう。

また少々斜め気味な見方ではございますが、「古代文明発掘史の変遷」という視点で見ても、結構面白く読めます。

たとえば、ピラミッド
連載開始当時の昭和50年代では、「多く奴隷によって建造された」というのが一般的認識でございましたので、当然そういった描写が多く出てまいります。が、現代では「ナイル川反乱時の一種の公共事業」であり、職人や工夫たちには十分な給料も福利厚生もあったことが知られております。
ヒッタイトにしたって、当時は「鉄器を最初に製造した」と言われておりましたが、近年(2009)、ヒッタイト帝国が起こる前から、すでにアナトリアに住む民族は鉄の製造に成功していたらしい証拠が出土しています。

時代とともに新たな発見があり、それによって定説ができたり覆ったりしていく。それを検証しながら読んだり、物語にどう反映されているかを見るのも楽しみの一つでございましょう。

ワタクシぐらいの世代ですと、これを読んで「古代エジプト」や「古代オリエント文明」にはまった人は数知れず…の筈。ワタクシも今でこそ日本史好きになってますが、歴史オタクへのスタートはエジプト文明への興味だったんでございます。某吉村先生が「ツタンカーメン王墓発掘」の本を読んで考古学の世界へ入ったのと似たようなモンかもしれません。 
 
 なにしろ56巻という大長編ですし、ストーリーはもはや「白ヤギさんから♪」的な、エンドレス「拉致監禁」時々「イチャイチャ」なものでございますので、秋の夜長に、気長ぁ~に読むのにはよろしいかと存じます。
 
►『ベルサイユのばら』(5巻セット/単行本)


 著:池田理代子 集英社 2003/08 208p ISBN978-4086179119

 文庫版はこちら(全5巻)
 ベルサイユのばら 全5巻セット (集英社文庫(コミック版))
 

さて、もう一つのワタクシ的「歴史オタク的エポック漫画」と申しますのが、アニメにも映画もなり、宝塚の舞台や、最近ではパチンコにもなった(これの映像がべら棒にきれいだった)「ベルサイユのばら」

こちらも連載は昭和47年(!)と大層古い。一時は社会現象にもなったといわれ、力石徹に続いて二人目、その死に際してお葬式が開かれたキャラクター、男装の麗人オスカルが登場する作品でもございます。

舞台となる時代背景は、これまた世界史上に名高い「フランス革命」。 
 「アンシャン・レジーム(旧体制)」と呼ばれた封建体制の崩壊による新たな時代の幕開けであり、王権神授説のもと「絶対王政」が当然であった時代に、自由・平等・博愛を高らかに歌い、今日に至る「民主主義」「人民主権」の概念が芽生えた輝かしい瞬間でございます。

物語は、その革命で「人民の敵」として処刑される悲劇の王妃マリー・アントワネットが、フランスに輿入れしてくるところから始まります。
ひところは「彼女の浪費のせいでフランスは傾き、革命が起こった」という誇張された表現もございまし、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?」と飢えに苦しむ民衆の事を聞かされて言い放ったとされるなど、彼女は何かと評価の低いおバカな人物とされてきました。

しかし近年研究が進むにつれ、彼女の風聞や評価は革命期や後の世に、意図的且つ悪意を持って流布されたものが多く、実際にはさほど愚かでも無神経でもなく、むしろ子煩悩で優しい人柄であったと分かってきております。実際、彼女の輿入れまえから、既にフランス経済は破綻寸前でございましたし、上の「パンが云々」も、別の貴族の婦人が言ったものと確認されています。

それでもやはり、彼女が浪費家で享楽的性格であったことは否定できないようでございますし、あまり頭が良い方でもなかったのも事実の模様。
が、それにしたって、当時の貴族社会を考えればさほど珍しいことでもなかったのでしょうから、彼女はごく普通の、ごく平凡な「貴族の女性」だったのでしょう。

そういった部分を、この漫画は非常にうまく、また分かりやすく描いております。
とりわけ、彼女は後にスウェーデン貴族のフェルゼンとの道ならぬ恋に苦しむことになりますが、その中で「神は何故、私という平凡な女にふさわしい、平凡な運命を与えてはくださらなかったのか」と嘆くシーンなどは、貴族なり王族なりに生まれたが故の、そしてフランス革命という巨大な歴史の歯車が音を立てて回り出す瞬間に出会ってしまったが故の悲劇を感じさせて、一個の人間としての彼女の魅力を見る思いがいたします。

そもそも作者の池田理代子さんは、ツヴァイク作の小説『マリー・アントワネット』に感銘をうけてベルサイユのばらを執筆したとのこと。

►『マリー・アントワネット』

著:シュテファン ツヴァイク 翻訳:中野京子 角川書店 2007/01
 ISBN978-4042082071

 岩波文庫版はこちら
 マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫)

 河出文庫版はこちら
 マリー・アントワネット 上 (河出文庫)>
 
ワタクシも読みましたが、実に人間味をもった女性として感動的にアントワネットは描かれておりました。それはベルばらにおけるアントワネットに、見事に反映されていると申せましょう。興味のある方はこちらもご一読を。

さて対照的にオスカルはまさに「非凡なる魂」をもった人物として描かれております。
勇気、決断、思想的な高潔さなど、どれをとってもその辺の男なんぞ目じゃないほどに持ち合わせた、でも、女性。アントワネットが「平凡な女性」であるが故に苦しむなら、オスカルは「非凡な女性」であるがゆえに苦しむことになります。

何しろ女の身で軍人です。頭も非常に切れます。さまざまな出会いを通して彼女は、爛熟の頂点をすぎ、後は腐敗して落ちるのを待つのみとなった祖国フランスの窮状をよく理解し、また新しい価値観や思想のもつ瑞々しさや、それを信奉する若い改革者や思想家たちの持つエネルギーに大きな魅力も感じるようになっていきます。

しかし、自身は貴族であり、王室と国家を守護すべき近衛であり、軍人です。また腐敗したとはいえ、すべての貴族に問題があるわけでもなく、アントワネットとの間にも、長年にわたって築き上げた信頼と友愛がございます。

平凡であるがため時代の流れも読み取れず、単純に自分の属する世界と価値観を信奉するアントワネットと違い、オスカルは自身の属す世界への親しみと理想とする世界の乖離という「イデオロギー上の悩み」に翻弄される事になるのです。

もちろんご承知の通りオスカルも、フェルゼンへの思慕アンドレからの求愛などで、それなりに女として悩みます。そこがともすればあまりにも高潔で美しすぎる彼女に「可愛げ」を与えておりまして、ワタクシなんぞはとても「萌える」一面ではございますが、あくまでも彼女の本質は「女」であるよりもまず「思想家」であり「行動者」でございます。そこが彼女の苦悩の本質であり、惚れた男のために戦場に立つといった巴御前以来連綿と続く日本の「女戦士」の系譜の中でも、彼女を異色な存在としていると要因でございましょう。
 
非凡と平凡
二人の好対照な女性を軸として、その愛と苦悩、生き様死に様を描き、それをもって「フランス革命」を描いたのが「ベルサイユのばら」という作品であると、ワタクシは思っております。
 
「王家」と同様に、この作品に出会ったためにフランス文学に傾倒したり、フランスへ留学したり、それこそフランス革命そのものを研究するようになった方は数多く存在すると伺っております。斯く申すワタクシも、これがきっかけで随分とフランス革命史の本やら伝記やらを読みました。

実際の歴史、特にオスカルもアントワネットも死んだ後の革命史を知ってしまうと、結構「残念」と申しますか、「なんだったんだ、あれは?!」と言いたくなることもタンとございます(まぁ人間なんてそんなもんだろうとも思いますが)。
が、それでもやはり、歴史好きにとって「フランス革命」というものには、燦然と輝く魅力に溢れた出来事でございますし、その後を知れば知るほど、(架空ではあっても)オスカルという人物の高潔さや、アントワネットの悲劇性も際立つと思われます。
 
文責:吉野御前「一期の夢
 

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「クジラの彼」

更新情報08:『クジラの彼』 著:有川浩 [ライトノベル] 
【紹介者:紗月様】
本は読みたいけれど、まとまった時間が取れない。
本を読もうと思っても、面白くない本を選んでしまうのは嫌だ。
短時間で、ぐいぐい引き込まれて読めて、読後感の気持ち良い本と出合いたい。
 
もしもあなたが、そんな風に思っていて、その上ヤマトファンなら。
もうひとつおまけに、あなたの過去に胸がきゅんとするような恋に落ちた、乙女の頃があったなら。
 
『クジラの彼』を読んでみませんか。



►  『クジラの彼』

 著:有川 浩 角川書店 2007/02 245p ISBN978-4048737432

 文庫版はこちら。
 クジラの彼 (角川文庫)
 

 

誰かのお勧め本を読む
そんなやり方で本を選び始めて約1年。大きなハズレがなくなったので、こういう紹介の仕方をさせていただきます。
「○○さんが面白いと言っていた」という要素も、読書に味を足してくれるでしょう。
そういう観点からすると、今回のブックフェアは、たいへん美味しい企画だと思います。
 
さて、『クジラの彼』
最初にタイトルを見たとき、『クジラのだと勘違いしたんです。
だって、そっちの方がイメージぴったりでしょう? クジラの彼だなんて、意味不明~(笑)。
でもね、クジラの彼、で正しいんですよ。だって彼はクジラのような潜水艦乗りなんですから。
 
この本には6本の短編が収蔵されています。そのどれもが、国防している人たちの恋愛ストーリーなんです。ね? ヤマトファンなら、興味あるでしょ?
 
そのトップバッターが、潜水艦乗りを恋人に持つ彼女のお話です。
私たちが乙女だった頃(笑)、携帯電話もメールもなくて、電話の内容を家族に聞かれるのがすごく嫌でした。わざわざ10円玉を握り締めて公衆電話にこもったこと、ありませんか?
夜の電話だって遅い時間は自粛したし、家族が電話に出て取り次いでもらうのって、すごく緊張したものです。
いつでもすぐに携帯で連絡が取れる。今はいい時代ですよね(笑)。
 
でも、24時間でも連絡が取れるツールなんていうものがあるから、逆に連絡がない時の不安というのは、昔より大きいんじゃないかと思います。
普段から軍事機密に縛られている自衛官。潜水艦は特に、長期航海に行っちゃうし、潜水しちゃったらアンテナは全然立たないし、音信不通がずっと続くんですよ。
そりゃあね、いくら相手のことが好きでも、相手に好かれていると思っていても、何も約束もないまま待つなんて、不安でしょうよ。
 
遠距離恋愛は、不安定なもの。
だとすれば、潜水艦乗りの恋愛って、絶望的だと思いませんか。

お互いの気持ちを確かめようがなく、疑心暗鬼になりやすい。
離れている間に、新しい出会いがあったり、連絡がないまま自然消滅しちゃったり。
けれども、それを乗り越える愛だってあるんです。
 
というわけで、遠距離恋愛7年(しかも無約束、つーか片思いだった・笑)の末に結婚した紗月がお勧めする一冊を、どうぞ読んでみてください。
読んで、この本に登場するオンナノコたちが気に入ったなら、その馴れ初めが書かれている『海の底』とか『空の中』も読まれてはいかがでしょう。
こちらは長編となっていますから、読み応えありますよ。
 
秋の夜長に、乙女に戻ったつもりでお読みください。
文責:紗月「三日月小箱


文中、ご紹介のあった本はこちら。

『空の中』

 著:有川浩 メディアワークス 2004/10/30 482p ISBN978-4840228244

 文庫版はこちら。
 空の中 (角川文庫)

『海の底』


 著:有川浩 メディアワークス 2005/06 451p ISBN978-4840230926

 文庫版はこちら。
 海の底 (角川文庫)
 

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