TVの江戸時代劇といえば大江戸捜査網(瑞喜、マニアック!?)。
銭形平次、鬼平犯科帳。そして、水戸黄門!
どれも、お江戸が舞台のお話です。(水戸の元気なご老公の話は全国行脚だけど…)
今回ご紹介するお話は、江戸時代ですが、お江戸常識そのまま、というものではありません。
お江戸と上方(かみがた)の大坂や京都。
距離が遠いと異なることが多いんです。
たとえば、味付け。
関西は「薄味」。
関東は…
前述の時代劇でも、高額貨幣の単位は「両」です。でも、これはお江戸が舞台だから。
実は、通貨って全国一律では、ないンです。
(ちゅーか、気が付かなかったのは瑞喜だけ??)
大坂は『銀貨』。
つまり「一両、二両」という代わりに「銀一貫や一匁(もんめ)」を使う。
お江戸と上方。あの時代ではまーったく別の国。
だったんですよ。
さて、前置きが長くなりましたが今回ご紹介する2本。
どちらも上方出身の主人公のお話。
ただ、舞台は大坂とお江戸であり、男性と女性と違います。が、どちらも『出世もの』です。
つまり、主人公は最初、どん底なんですよ。
そこから、いじめられ苦労して、問題を排除しながら這い上がっていく。
手を貸す者もあらわれるけど、基本・主人公が頑張って頑張って問題を解決していくお話。
(1本は完結していないので、(一応)どうなるのかわからないですけど…)
そこに、どんなエッセンスをちりばめるか… が、作者の腕の見せ所、っちゅーもんでしょう!
►『銀二貫』
さて、最初にご紹介するのが『銀二貫』――だいたい、2百万円くらい。
『2百万円』っていうショーゲキ的な題名っちゅーことです。
江戸時代・一般庶民であれば、大きなお金を必要としません。
稼いだお金で食べる。毎日が自転車操業。でも、それで立派に生きてけます。
中小商人も同じ。店という資産がある分、お金は出入りする。
それでも、『2百万円』は大金。
大金だけでど、出すときはさらりと出す。
それが、大坂商人の神髄なんですよ!!
この『銀二貫』作中キーワードで何度も出ます。
大阪・天満の寒天問屋、井川屋の主人・和助が主人公を救うところから、話ははじまる。
父親を切られ主人公まで殺されそうになったところを、商人ならではの采配で救うのである。
その値、『銀二貫』。
いや。和助は、『救う』んではない。『仇討を買った』のだ。(ここ、ポイント)
こうして武家であった主人公は名前を松吉と改め、井川屋に奉公することとなる。
大坂商人の神髄・「始末」「才覚」「神信心」。
練羊羹(ねりようかん)誕生秘話、主人公の恋… これがまた、切ない! いや、「はがいい」
そうそう、全編上方言葉です。(慣れないと読みにくい??)
でも、大坂商人のお話で大坂人情ものなので、この微妙な言い回しも楽しんでいただければ。
何度、ほろりときたか。
みな、一生懸命生きてます。
そして、助け合って生きてます!
ちょっと薀蓄(うんちく)系の部分は多いですが、読了後は、さわやか。
ええ、安心してお読みください!
そして、最後の一言に、にやりと笑ってください!
►『八朔の雪-みをつくし料理帖』(ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
著:高田郁 角川春樹事務所 2009/05 271p ISBN-13:978-4758434034
さて、お次は女性が主役。舞台はお江戸です。
上方から出てきた主人公。
べっぴんさんではありません。むしろ愛嬌のある顔立ち。
要領もよいほうではないけれど、ひとつだけ天才的なものがある。
それが、彼女――澪(いい名前♪)の場合「味覚」。
はい、『料理もの』なんですよ! 料理で『出世もの』なんです… が!!
女性の料理人が認められない江戸時代。(家庭の料理は、女性が作るのに!)
そして、大坂の料亭出身というのも、お江戸では不利。
(前述の味覚の違い、それに食材の地域差。さらに食い手の食材に対する感覚)
さらにさらに!!
男性料理人(大店!)の妨害。
『出世もの』には付き物の苦労だけど、澪ちゃんは筋金入りの苦労を背負い込む。
というのも『雲外蒼天』という苦労が絶えない運勢だから。
ただ。
この艱難辛苦を耐え精進を重ねれば、他の誰も見たことのない青空が見れる――
だから、青空をみるために頑張っている。
澪ちゃんの周りの人も苦労人ばかり。
だからこそ、他人にやさしいのかもしれない。
そして、気になる男性も、ちら… ほら… 恋の行方はどうなるんだろう!!
下がり眉、がんばれ!
文責:瑞喜様「星花繚乱~星の彼方へ」
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